ゆりおろぐLIFE

エッセイと日々の活動。

地元がだいきらいな人に読んでほしい。

故郷のことを好きな人、嫌いな人。

どちらの方が、多いだろう。

 

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私はというと、故郷は大きらいである。

 

しかし最近やむなく故郷の町に引っ越してきた。

妊娠・子育て・そして夫婦無職のため、いたしかたなく、というのが本音だ。

 

この町のゴミゴミした駅も大嫌いだし、男も女もマイルドヤンキーが多いし、チェーン店ばかり品なくどんどん建っていくし、キャッチの変な男性が大量にうろうろしているし、

石を投げれば同級生や親戚にあたるような気がして、出歩くときにはいつも気持ちに鎧をつける。

 

早く別の場所へ行きたい。別の場所なら、どこでもいい。

それくらい、嫌いである。

 

まちづくり講座に参加?!

なぜか先日、この町のまちづくり講座に参加した。

 

こんなふうにいうと意識高い感じがするが、私は故郷への愛着はおろか、町づくりにも興味は無い。

 ただお世話になった方がたまたま先生をされるというので、ご縁を感じて行ったまでだった。

 

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講座はワークショップ型。

参加者はグループに分かれて、「この町で自分が面白いと思う場所」を挙げていく。

 

まず、初対面の人と沢山話して、控えめに言っても大変楽しかった。

日頃夫としか会話をしていないので、コミュニケーションの飢えが満たされていく…。

みなさんそこにいてくれてありがとうございます…

仲良くしてください…。

 

 

参加者は中高年の方ばかりで、はじめは気後れした。

しかしグループワークに入ると、雰囲気はがらっと変わる。

 

私は参加早々、「私はこの街が嫌いです」とぶっちゃけた。

なぜ嫌いなのかと問われて、うまく答えられなかったけど。

 

他の人の話はとても面白いものだった。

 

この町には、古くから続く奇祭や奇妙な習慣があるらしい。

自然の中の染物屋さんが超高級だけれど素敵らしい。

地元の野菜を使ったレストランは素敵な女性が経営していて居心地がいいらしい。

 

 

興味を惹かれる情報も多いのももちろんだが、

話しているうちにどの人も笑顔になり、「この町の明るい部分」について話している人の顔は、美しいなあと思った。

私はさぞ、苦虫をかみつぶしたような顔で歩いていただろうなあ。

 

 

講座の帰り、個人経営のイカした飲食店特集の冊子をもらった。

 

外はもう真っ暗。月の綺麗な夜である。

 

故郷の町で新しく出会うということ

歩きながら思った。

 

私が生まれ育った町をだいきらいなのは、

ここでそんなに良い思い出が無いからだ。

 

好きな友人にいっぱい会える場所に変われば、

きっともっと好きになる。

 

「この店が面白いよ」「この道がいい雰囲気だよ」「あの看板がおかしくて好きだ」

そんな話を聞いた後にみる町は、いつもより面白く感じた。

 

この町をもう少しちゃんと見て見るのも悪くないかなあ。

 

そう思ったら、コロッケを猛然と食べたくなった。

駅ビルに駆け込み、処分間近の割引コロッケを買う。

 

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(そんなにおいしくは無かった!)

 

でもこの町でコロッケを食べ歩きする日が来るとは思わなくて、何か感動した。

大人になって故郷をまわる。故郷で、新しい人と出会う。それは過去に上書きをする、という感じがして、いいかもしれない。

 

自分にとってこれまでと違う場所にできたら良いなあ、できる気がするなあと思った。

 

だいきらいなのは、あなたが「大嫌いでいよう」と思っているから

翌日、個人経営のレストランを夫と訪ねることにした。

うまいうまいハンバーガー屋さんである。

 

たどり着くまでに、今まで歩いたことのない道を歩いた。

 

ちょっとロマンチックな夜景をのぞむ橋があった。町の目立たないところに、見たことのないお店がたくさんあった。

 

…今までは、町も嫌いだし、歩いてる人も嫌いだし、ここを歩かなきゃいけない自分も嫌いだった。

 

 

でもフラットに、「きっと面白いものがあるはず」と思って見ると、

面白いと思えた。そして、いつもよりリラックスできた。

 

瞳を、まるっと洗ってきたような気持ちである。

 

たのしい。

 

牛の味をしっかり味わうハンバーガー!ふわふわのバンズ。

とてもとても、美味しかった。