ゆりおろぐLIFE

エッセイと日々の活動。

子どもとみる夢、子どもとは叶えられない夢

好奇心が旺盛な親が小さな子どもとのライフをどう楽しめばいいのかってずっと悩んでる。

 

先月、札幌に旅行に行った夜、私は呆然としていた。

 

北海道に来るのは、初めてだった。

広大な大地、東京とは違う気候、豊かな食。そして牛。北海道らしいことを何かしたい!とミーハーな私はワクワクした。

 

旅行前、ガイドブックを見て、行きたいお店をピックアップしておいた。六花亭本店のカフェに行って、焼きたてのチーズタルトを食べようと思った。時計台も見たいし大通公園も見たい。小樽でかにも食べたいし、すみれのラーメンも食べたい。塩ジンギスカンも食べてみたい。オルゴール館も行きたい。広い温泉も入りたい。 

 

でも、2歳前の子どもと過ごすには、これは全部は叶えられない夢だった。

 

大人だけなら全部回れたと思う。でも子どもは、カフェに行って美味しいものを食べようと言っても理解ができない。それより道端の木切れで遊ぶ。おみやげを見るより、お店の階段を登ったり降りたりしたがる。そもそもわが子は車に乗ることすら嫌がった。

 

私は、でもできる限り実現しようとした。

車で片道1時間半の移動。-2度の寒さの中での町歩き。

小樽のレトロな街並み。可愛い雑貨屋。焼きガニも楽しんだ。有名な半身揚げも食べられたし、ルタオのケーキも買った。でも子どもを抱っこしたり道路に飛び出さないように気をつけたりしていたら、どんどん疲れるし、ホテルに戻るのが遅くなった。

でもそれでいいと思っていた。せっかく旅行に来ているのだし、部屋にこもっていてもつまらない。初めての土地はわくわくして、楽しかった。

 

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それなのに、ホテルに帰って1日を振り返ったときに、

思い出すのが子どもの顔だったことにすごくショックを受けた。

 

寒い中歩き回って遅くなってしまったお昼ご飯で、子どもがラーメンを前にして嬉しそうにしていた表情。

オルゴール館で、私の耳にオルゴールを当てて聞かせてくれたときの嬉しさ。子どもの不思議そうな、でも一生懸命耳を傾けている顔。

 

なんで子どものことばかり覚えてるんだろう。

 

そうして思い出すのは子どものことばかりなのに、子どもが嬉しそうにしていた時間が、少なかったような気がした。というか少なかったと思う。 

最高気温2度の寒さの中、子どもも小さいのにさんざん連れ回して、お昼ご飯も遅くなってしまった。お腹が空いていたかもしれない。寒さのせいか、初めての場所が怖かったか、おとなしかった。

 

 

私は、自分のやりたいことがあり過ぎた。

  

大人になってから、「やりたいことをやること」「多少の困難があっても実現できる行動力」を大切に思ってきた。1人で海外旅行も沢山行き、刺激をいっぱい受けてきた。楽しかった。私にとっての豊かな人生とは、やりたいことを思いつくことであり、それを実現できることであった。それを繰り返していくのが人生だと思って生きてきた。

 

子どもが生まれてからも、「子どもが生まれたら何もできないよ」と言われたのが嫌で、自分のやりたいことはできる限りやってきた。時間を見つけて勉強して、サイトを作って、仕事もはじめた。

 

けれど今回北海道に家族旅行に来て、自分は子どもを産む前から全然アップデートできてないんだなと感じた。

私はまず旅行があってやりたいことがあって、それに子どもを連れて行くという発想だった。ずっとそうしてきたから。私は全然変われてない。変わらなきゃいけないんだと思った。 子どもも楽しめるように。子どもが楽しめるように。

 

小樽のワインをぐびぐび飲みながら、しんみりした気持ちになっていた。

 

旅行は、いつでもいけるというわけじゃないけどまだできる。焼きガニはあと10年後も多分食べられる。すみれのラーメンも食べられる。

 

でもよちよち歩きの、たどたどしい言葉遣いの、ママママと抱っこをせがむ子どもといける旅行は、今だけしかできない。

 やりたいこと、自分の欲望に少しだけブレーキをかけることはやっぱり必要なんだと思う。はちゃめちゃやりたい、気分であちこち見て回りたい、でも子どもはついてこれないから。

 

自分がやりたいことと、子どもが楽しめること、夫が楽しめること。その3つの円が重なる部分をさがして行きたい。行けるはず。

 

多分自分がおばあちゃんになって、もうそろそろ死ぬかなって思った時、過去に戻れるなら今の子どもが小さいときを選ぶかもしれないと思っている。子どもを思い切り抱っこできるのは、最高の瞬間だから。

未来の自分が死ぬ前に戻りたい場所ナンバー1のところに、今私はいるんだって時々思い出す。

 

 

旅行から帰ってきた日、お風呂の中で子どもに聞いてみた。

「北海道、なにか楽しかったことある?」って、1才9ヶ月の子どもに、伝わらないだろうと思いながら聞くと、

 

「ちゅるちゅる」「ブーブ」と答えてくれた。

 

ラーメンちゅるちゅるちゅる美味しかったね。車いっぱい乗ったね。

そんなことで、胸がいっぱいになってしまうのだった。