ゆりおろぐLIFE

エッセイと日々の活動。

キズナマン。黒子のバスケ脅迫事件を考える

最近ものすごく衝撃を受けた事件がある。

黒子のバスケ脅迫事件だ。

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4年も前の事件なのに、なぜ最近なのかというと、知人がたまたまSNSで記事

【黒バス脅迫事件】実刑判決が下った渡邊被告のロジカルでドラマチックな『最終意見陳述』があまりにも切ない | かみぷろ

をシェアしていたからだ。わたしは数年前ほとんど新聞もテレビも見ていなかった。見ていたとしても全く聞いていなかった。

 

黒子のバスケ』というのは大変健全なバスケ漫画らしい。事件は、渡邊被告が、成功している著者を妬んで脅迫したり、著者の出身である上智大学の体育館に硫化水素を置いたりしたというもの。

 

渡邊被告は昔バスケが好きだった。彼は小学生時代いじめを受けており、高校まで進学するも大学受験に失敗し、その後マンガ家を目指して専門学校に入ったが1年で中退し、契約社員で家賃4万のアパートに住んでいた30代後半の男性らしい。

「この事件は自分勝手な犯行で、努力もせずに成功者を妬んだ人間が、見当違いの「復讐」をはたらいたばかばかしいものだ」

黒子のバスケ事件」を検索すると、そのような記事が多い。

 

以下は、その「愚かな」渡邊被告の、裁判での最終陳述である。

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・・・日本中の前途ある少年たちが「安心」を源泉に「生きる力」を持って、自分の意志を持って、対人恐怖と対社会恐怖に囚われることなく、前向きに生きてくれることを願って終わりにしたいと思います。

今回は本当にありがとうございました。

2014年7月17日   通名 邊博史(ピョンバッサ)こと在日日本人 渡邊博史

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これが愚かな人の発する言葉だろうか?

彼は最終意見陳述の中で、両親からの虐待、いじめ、教師からも放置されたこと。「安心」をもたずに、努力してもほめられる経験がなく、ただ「怒られないように」周囲の顔色だけを窺ってすごす生活しか知らず、「生きている感覚が希薄だった」ことを語る。

逮捕されてから本を読み、自分が受けていたことが児童虐待であったことを知ったという。彼は、自分を表現するために、オリジナルの独特な言葉をあみだした。

特に印象にのこったのが、

キズナマン」という言葉である。

キズナマン」とは「人や社会や地域とつながっている人」であり、

対義語が「浮遊霊」。人や社会や地域とつながっていない人である。

キズナマン。なんというキャッチーな単語だろうか。

絆。日本の大好きな絆である。キズナマンはこれを皮肉ったような言葉だが、渡邊被告が真に切望したものなのだと思う。